上武絹の道ブログ

「世界遺産の楽しみ方 web出張版」第1回~百舌鳥・古市古墳群

2019.08.28

見学に行くべき? 行っても見られない? 最新の世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」

みなさん、こんにちは。NPO産業観光学習館の専務理事で佐滝と申します。

これから月に1~2回程度、「上武絹の道」エリア以外の各地の世界遺産や生糸・シルク関連の話題をお伝えしようと思います。
私は観光学や世界遺産を専門に研究している大学教員を兼務しており、国内外450件以上の世界遺産を実際に訪れています。
そうした経験をもとに世界遺産の専門家ならではの視点で、最新のエピソードをお送りします。


「富岡製糸場と絹産業遺産群」は、2014年に日本で18件目の世界遺産として登録されましたが、その後も日本では
毎年世界遺産が新たに登録され、今年7月にもさらに1件増えて、日本の世界遺産は23件になりました。

今年登録されたのが、ニュースでも広く報道された大阪府の「百舌鳥(もず)・古市古墳群」です。
地元以外にはなじみのない名前ですが、この古墳群の中で最大のものが、一般に「仁徳天皇陵」と呼ばれる、
教科書でだれもが名前を聞いたことのある前方後円墳です。

世界遺産に登録されると一気に観光客が増えます。この古墳群にも多くの見学客が訪れていますが、仁徳陵をはじめ点在する
巨大古墳は地上からは全貌がつかめず、見学に訪れてもその規模を実感するのは難しい状況です。
私も以前現地に行ったことがありますが、最も近づけるのは古墳の参拝所。
とはいえ、目の前にはこんもりした小高い森が広がっているばかりで、これが古墳だとはなかなか認識しづらいのです。

登録の発表直後に、近隣の空港からセスナ機で上空から古墳群を見下ろす遊覧ツアーが2日間限定で実施されましたが、今はまた
地上から見るしかありません。
百舌鳥古墳群のある堺市の市庁舎(21階建て)の最上階にある地上80mの展望台からはある程度古墳群を見下ろすことが
できますが、それでも仁徳天皇陵が前方後円墳であるという形までは確認できません。

来年以降、古墳群を上空から楽しむバルーンの運航が計画されていますので、その規模を体感したいなら
それを待つしかないかもしれません。
また、百舌鳥と古市は、同じ大阪府内とはいえ前者は堺市、後者は羽曳野・藤井寺市と全く別の場所で、
これまで直接行き来できる公共交通機関はありませんでしたが、8月22日から両地域を結ぶバスが運行されるようになり、
相互の行き来は便利になりました。
富岡製糸場から荒船風穴や高山社跡などにもこのような観光客用のバスがあったらいいのにと感じます。

大阪府初めての世界遺産、そして世界最大級の陵墓の世界遺産。皆さんはいつ見に行きますか?